クレジットカードに関連する法律4

4.統一消費者信用法

(1)消費者の権利と消費者の保護

これまでみてきたように、一枚のプラスチック板であるクレジットカードが適用を受ける法律は、相当混乱した状態になっています。法律のバグの部分は、業界にとってプラスに作用することもあるのですが、それ以上のマイナスに作用することもしばしばあります。クレジットカードの現在は、原点もしくはややマイナスの地点にいるように思いますが、今後のことを考えるとやはりそのようなバグは整理することが必要です。法律にはその国の文化や歴史、国民性が色濃く反映されるものですから、外国の法律の優れたところが、わが国でそのまま通用するかというと必ずしもそうではありません。しかし消費者保護の流れはアメリカから生まれたものです。わが国の法律にもアメリカの考え方がずいぶん輸入されていますが、日本式にアレンジされて相当手厚い消費者保護になっている部分も多々見受けられます。

手厚い消費者保護というのは誰でもが思いつくように、相応のコストを伴うものです。クレジットカードが決済の道具であるとしたときに、日銀券を使うとき以上の安心があるというのはそれだけでコストを伴っているのです。それはカード会社が払うコストですが、最終的な負担者はカードホルダーです。結果的にカードホルダーは高いコストのクレジットカードを利用させられることになってしまうわけです。ただし、ここで整理しておかなければならないのは、犯罪対策と消費者保護の関係です。クレジットカードはお金と同じように使えますから、お金と同じように犯罪の道具になります。犯罪者は、そのつけをカードホルダーに回すことによって利益を上げようとするのです。その場合必要な防犯対策は、カードホルダーの協力です。使っていない請求がきたら、使っていないとカード会社に連絡することが消費者保護につながるし、カード会社の防犯対策につながるのです。

例えばアメリカには公正信用請求法(Fair Credit BilingAct)という法律があります。この法律は、請求書に覚えのない請求が入っていた場合は、それに対して公正な扱いを受けることを規定しています。日本にはない規定です。単なる消費者保護施策の一つとしてこのような規定を設けるのではなく、消費者の権利として認めることがポイントとなっています。もっともアメリカのクレジットカードは、請求を受けたカードホルダーが小切手に支払う金額を記入してカード会社に送る方法をとっていますから、カードホルダーが請求書を見ないということは考えづらいところです。わが国では、金融機関の自動振り替えを利用しているので、満足に確認しないで振り替えられてしまう人がいるそうです。請求書の確認は消費者の権利であって、義務でもあるのです。同じように消費者の権利として認められているのが、個人信用情報機関に間違った情報を登録された場合の回復の権利です。アメリカの公正信用報告法(Fair Credit BilingAct)は、開示請求権と合わせそのような場合に訂正を求めることを認めています。わが国も個人情報保護法が施行になって、同じ状態になっています。安心な取引というのは、消費者の期待しない事態が発生しないことです。しかし、その状態が満点であることは間違いありませんが、そのような事態が発生したときのリカバリーの手段を消費者に認めた方が、より消費者の権利を認めたものであり効率的といえます。

(2)買い物の責任

また、アメリカにもわが国の割賦販売法の支払い停止の抗弁と似たような規定があります。ただしその取り扱いは相当異なります。アメリカでは消費者が瑕疵のある商品を購入した場合、消費者自らが誠実にその商品の返品のために、あるいは販売店との間の問題を解決することを条件に、支払いを止めることが認められるというものです。つまり支払う責任を消滅させるのではなく、問題解決までの間支払いを猶予させる権利が消費者に与えられているのです。この申し出は書面でしなければなりません。さらに購入代金が50ドル以上であること、さらにその消費者の住んでいる州での買い物か、消費者の現住所の100マイル以内でなければならないという条件がつきます。

割賦販売法の規定は、「割賦購入あっせん関係販売業者に対して生じている事由をもって」カード会社に支払いを停止できるとしており、その抗弁内容をカード会社から提出を求められたときは「提出するよう努めなければならない」としています。アメリカの規定とはまったく逆の発想です。つまりアメリカは自分で解決することが前提となっており、わが国の規定はカード会社に解決を委ねることができるのです。この日米の違いは、クレジットカードの性格づけにも影響するものです。アメリカでは小切手も買い物に利用されています。小切手で決済することの意味は、自分の銀行口座から、販売店の口座に資金が移動することを意味します。するとその延長線上にあるクレジットカードを使った場合も小切手と同じように扱われるのが当然です。わが国の買い物の際の決済に当てはめていえば、現金で買ったのとなんら変わりがないということになります。アメリカではクレジットカードが現金や小切手と並ぶ決済手段の一つと認識されているからです。一方わが国は、決済とは銀行の自動振り替えや現金を使うことで、クレジットカードはそれ以外の特別のものとみなされているように思います。二つの国の同じような規定をみると、自己責任に対する考え方の違いが浮き彫りになってきます。しかし自己責任の問題というよりも、日本のクレジットカードは法律ができた当時とはまったく別物のような存在になりつつあるので、その面からの変化が求められているのです。

(3)規制改革、行政改革の視点

クレジットカード 行政

またこの間題は、規制改革、行政改革の視点からも議論が必要です。割賦販売法も貸金業規制法もクレジットカードを規制している点では同じですが、割賦販売法はモノに関する部分だけ、しかも支払い回数によって規制の適用の有無が決まり、貸金業規正法はお金に関する部分だけに限定して両法が存在しています。法律のバグということでは、いくつか例をあげることができます。すでにーきいたクレジットカードとショッピングクレシットやデビットカードとの関係はもちろんのこと、金利規制の考え方が両法ではまったく違う態度をとっています。

割賦販売法では通達で、割賦の手数料率は出資法を遵守するよう指導がありますが、割賦販売法自体には金利規制の考え方はありません。販売信用でそれほど高い金利に設定すると、どこかから融資を受けて買い物をするだろうから法規制の必要はない、という考えに基づくものと思いますが、悪徳業者がこのバグを利用すると何が起こるかわかりません。また、割賦販売法は明確に消費者保護をうたっていることから、商行為に該当する取引については適用除外の規定を設けています。支払い停止の抗弁や期限の利益喪失に係る手続きに20日の催告期間を設けるなどです。これに対して貸金業規制法には商行為適用除外の規定はありません。あまねく資金需要者に対して同様にかかるので、銀行以外のノンバンクの貸金業者が行う融資については、消費者も企業もまったく同一の規定になっています。割賦販売法が商行為適用除外の規定を設けているのは、消費者は事業者よりも法律行為に不慣れだからという理由ですが、このような理由であれば貸金業規制法にも同じ規定があってもいいはずです。

書面の交付などの規定では、割賦販売法がリボルビング払いにも対応した書面交付ができるよう対応されているにもかかわらず、貸金業規制法は旧態依然のままです。カード会社のシステムが、ショッピングとキャッシングで180度違うようなものになっているようなことはありません。法律は、時代の変化に合わせて柔軟に変わっていかなければなりません。このままでは消費者保護のための法律であるにもかかわらず、消費者に高いコストを押し付ける法律になる可能性があるのです。また両法とも登録業者に対して立ち入り検査できる権限が行政に付与されています。このこと自体はなんら問題ではありません。行政の仕事として事業者がきちんと法律を守っているかをチェッグするのは、消費者としても求めたい行政の仕事のひとつです。ところがたいていのカード会社は、ショッピング(割賦販売法=経済産業省)とキャッシング(貸金業規制法=金融庁)を行っているため、立ち入り検査を二重に受けなければならないのです。内容に多少の違いはあっても、一度に済ませられないものだとは思えません。さらに立ち入り検査の要員は、二つの省庁がそれぞれ抱えることになります。

立ち入り検査が消費者のためであったとしても、統一消費者信用法であれば、カード会社が立ち入り検査のために要する時間などのコストの半分は回避できるものです。またクレジットカードを使わない納税者としては、まったく認めがたいものです。クレジットカードをめぐる行政は、このようにタテ割りの典型のようなことになっています。仮に統一消費者信用法を作るとしても、割賦販売法は政府提案の開法であって、貸金業規制法は議員立法です。このような場合は行政府の方から、議員立法の領域に立ち入るようなことはまずありません。立法府は国権の最高機関だからです。すると統一法を実現させるためには、議員立法によるしかありません。行政改革は政府の最重要課題として常に掲げられているものです。消費者保護の強化のために統二消費者信用法を提案する向きもありますが、その実現のためにはきちんと業界の実態と、消費者にとって何が利益になるのかを整理したうえでなければなりません。それに行政改革の視点が加味されれば、統一法の実現に一歩近づくのではないでしょうか。

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