クレジットカードの仕組み

1.決済手段としてのクレジットカード

(1)アメリカで生まれたクレジットカード

アメリカ

わが国でクレジットカードが使われるようになって半世紀近くになりました。時間の経過とともに現金主義だったわが国にも、少しずつ変化の兆しがみられるようになっています。ほとんどの人の財布には、お金とともに数枚のクレジットカードが入っていて、使う場面もいろいろ増えました。しかしアメリカの店内での決済状況を示したをみると、わが国がまだまだ現金主義であることを認めざるを得ません。店の業態によって違いはありますが、わが国では現金による売上高が圧倒的に多いのです。クレジットカードが使われるようになってはきているものの、それ以外のデビットカードや小切手はほんのわずかしかありません。アメリカでクレジットカードが誕生したのは100年くらい前のことですが、それまでのアメリカがわが国のように現金主義だったかというと違うのです。そもそも小切手が個人の決済に利用されていて、それが進化してでき上がったのがクレジットカードだったのです。ですから今でも小切手を使う人はいますし、それがさらに進化したデビットカードが使われているのです。結果的にアメリカは現金の出番が、限りなく少なくなっている社会ということができます。例えば100ドル紙幣を街中で使おうとすると、カジノ以外では相当不審だという扱いを受けます。逆にわずか数ドルのスターバックスコーヒーでもクレジットカードが使えます。現金を引き出すためのATMも、わが国のようにどこでもみかけるわけではありません。しかも、せいぜい500ドルとか1000ドルしか一度に引き出すことはできません。出てくるお金は20ドル札が単位です。100ドルを引き出そうとしても、出てくるのは20ドル紙幣が五枚なのです。

このような日米の現金をめぐる社会環境を考えないと理解できません。つまり小切手から発生したクレジットカードがあって、さらに別の便利さを求める社会の要請によってデビットカードが発生して、今はデビットカードの方がよく使われる社会になっているのがアメリカ社会というわけです。この一連の流れの中で共通しているのは、現金の代用品の小切手に代わるものとして、クレジットカードやデビットカードが使われているということです。現金取引であれば買い物代金の清算は、商品と引き換えに現金を渡します。小切手であればそれを受け取った店が銀行に持ち込んで現金化します。クレジットカードやデビットカードは、間にカード会社などの第三者が入ることはありますが、小切手と同じです。ですからアメリカ社会では、クレジットカードはあくまでも現金と同じに扱われているのです。ただしわが国の場合は少々事情が異なります。簡単にクレジットカードとデビットカードのことを整理しておきましょう。

(2)クレジットカードとは

クレジットカード

月に一度の締切日を設けてその間の利用分を、まとめて所定の支払日に決済するのがクレジットカードです。つまり後払いということになります。カードホルダーの実際の支払いは全額を一度に支払うことも可能ですし、分割払いやリボルビングのように長期に支払うこともできます。このカードに入れるには、カード会社に一定の信用があると認められる必要があります。後払いですから支払いまでの期間は借金をしていることになるのですが、それを払える人と認定しない限りカード会社はクレジットカードを発行しません。ですからクレジットカードは持ちたいと思ってカード会社に申し込んでも、拒否されることがあります。クレジットカードを利用して買い物した代金は、カード会社が利用者(カードホルダー)に代わってすでに支払いを済ませています。カードホルダーはその代金を一カ月分まとめてカード会社に支払いますが、その方法は金融機関の口座を利用した自動振り替えが一般的に利用されています。アメリカではその代金も小切手で支払います。クレジットカードの利用は、カード利用時にこの口座に利用分だけの残高があるかどうかは問題ではありません。支払日に振り替えできるお金が口座に入っていれば問題はありません。したがって将来の収入を見越して利用することも可能です。

2.クレジットカードの機能

(1)カードホルダーにとってのクレジットカード

カードホルダーがクレジットカードを利用するのは、ポイントが貯まるからという理由もありますが、現金に比べるとそれなりの管理が必要になるクレジットカードを選択し、利用するのはそれ以上の理由があるはずです。二つの理由が考えられます。一つはID機能のことで、もう一つは支払い方法の選択ができるということです。ID機能は支払いを保証するものだと説明しましたが、その機能に付随して出てくる現金を持ち歩く必要がない、現金を持ち歩く危険性から解放される機能は、さらに発展して手元のお金の範囲に消費が限定されないことを意味します。自己コントロールできない人には危険な機能ですが、この機能がなければ海外でホテルに宿泊したりレンタカーを借りることはできません。最近ではわが国のホテルでも、クレジットカードを提示しないと保証金を取るようなところも出てきていますが、まだまだ一般的ではありません。これは顧客のことを信じているからに他ならないからなのですが、よく考えてみるとかなり危険です。例えばホテルであれば、宿泊に伴って食事や電話などをものすごく利用したり、レンタカーであれば、その事をどこか遠くに持っていき、もしかしたら返してもらえなくなるかもしれません。このようなリスクから逃れるために、代金の支払いが保証されるクレジットカード以外は認めないといったことになるのです。

いずれにしてもクレジットカードのメリットであるお金を持ち歩かない安全性と、お金がなくても買い物ができる便利さは、このようなクレジットカードが持つID機能と支払いを保証する機能から生まれてくるものです。ただし、加盟店のクレジットカードの取り扱い方にもよりますが、加盟店のメリットといえないこともありません。似たような機能としてインターネットの利用を挙げることができます。インターネットを利用すると、世界中の店から買い物することが可能です。そしてそれを支えているのはクレジットカードです。ただし、経験のある方はわかると思いますが、インターネットでクレジットカードを使うときに必要なのは、カード番号と有効期限だけです。それ以外に最近では、カード番号とは別の乱数の入力を求められるケースもありますが、まだまだ少ないのが現実です。店頭で利用するときのようにサインや暗証番号の入力を求められることはありません。したがって他人のカード番号と有効期限を何らかの方法で入手できれば、インターネット上では買い物できることになります。lD機能を完全なものにするためには本人認証が必要なのですが、まだこの分野は遅れています。かといってあまり重いシステムを入れると、カードホルダーが負担に感じてインターネットでのクレジットカードの利用をやめてしまいかねません。このように述べるとインターネットでクレジットカードを使うのは、ものすごく危険な取引のように思われるかもしれません。しかしカードホルダーは使った覚えのない請求を支払う必要はありません。そのためには、カードホルダーは請求書をきちんと確認してそのような請求が来たら、必ず異議を申し立てることです。カードホルダーからの異議がなければ、カード会社はそのような請求をしたことに気づかないからです。

さて、これらのID機能を支えているのはカードホルダーに与えられた信用です。その信用は後払いという形で会員契約に書き込まれているものですが、法律用語では期限の利益といいます。クレジットカードを利用した場合の支払いは、後日一括で支払う方法のほかに、回数指定の分割払い(installmentcredit)やリボルビング払い(revolvingcredit)があります。一括払いでも、何回かに分けて支払う場合でも共通しているのは、買い物と支払いに時間のずれがあることです。その時問のずれが期限の利益といわれるものです。期限の利益は法律用語ですから、蛇足になるかもしれませんが若干解説しておきます。現金取引であれば、商品の引き渡しと支払いは同時に行われるのが一般的です。クレジットカードの場合、支払いが買い物の時点より後になりますから、利用者は支払いまでの時間を得したことになります。期限までに支払えばいいという時間の利益を得るのでこのようにいわれるわけです。この期限の利益をカードホルダーからみると、二つの機能に分けられます。一つは、現金を持ち歩かないでカードで支払いを済ませてしまうというキャッシュレスといわれる機能です。商品と引き換えに現金で支払ってもいいわけですが、買い物代金の決済手段としてクレジットカードを使うわけです。当然お金を持ち歩かなくてもいいので、安全というメリットも受けることができます。支払いは後日一括の方法がとられます。もう一つは、商品と引き換えに代金の全額を一時に支払わないで何回かに支払いを分ける機能です。分割払いやリボルビングを利用するわけですが、この場合でも、必ずしも家計に余裕がないというのではなく、貯蓄したお金を減らさないためにこの機能を使う人もいます。

このようなクレジットカードの使い方は家計支出の平準化機能といわれています。どちらの場合も、カード会社から期限の利益を受けて、支払いが後日になるのは共通しています。キャッシュレスと家計支出の平準化は利用者によって認識されるもので、必ずしも切り離して考えることはできません。家計支出の平準化ということができても、一括払いのこともあります。来月給料が入ったら買おうと思っていた商品を、今月クレジットカードで決済し、来月支払うというようなことはよくあることです。表面的には一括払いでのクレジットカードの利用ですからキャッシュレスと同じですが、機能的には家計支出の平準化といった方が適切です。どちらの使い方をするかは利用者のそのときの経済状態と考え方によりますが、合理的な選択をしないで無計画に使っていると、使いすぎの問題にいずれ直面することになります。

(2)加盟店にとってのクレジットカード

デパート クレジットカード

どのような業種の店でも消費者に商品の販売やサービスの提供を行うところは、消費者からその対価をもらうことで成り立っています。これは百貨店やスーパーのような大規模店でも、多くの店はクレジットカード会社と加盟店契約を結び、クレジットカードを受け入れています。店がクレジットカードを加盟店として受け入れているのは、販売促進の機能と金融の機能をクレジットカードに期待してのことです。販売促進機能は、次のようなことです。カードホルダーの顧客は、一般的に現金客よりも買い上げ単価が高いといわれています。この意味はカードホルダーが、クレジットカードを持つことができない消費者よりも経済的に余裕があり高額な買い物をするという意味と、販売の努力によって買い上げ単価を上げることができるという二つの意味を含みます。紳士服の販売店であれば、スーツを購入に来たカードホルダーに対して、ネクタイを追加販売できるというようなことです。またいわゆる衝動買いをしやすい傾向があるのも、カードホルダーといわれています。店の人に勧められたり、またみているうちに欲しくなっても、手元に現金がなければ買い物はできません。ところがクレジットカードは財布に入っているお金に拘束されませんし、また支払いまでに時間があり、一度に全額を支払わずに済むので気軽に買い物ができるのです。

もっともこのようなクレジットカードとカードホルダーの関係は、必ずしもすべてに当てはまるものではありません。加盟店にとって、以上のような積極的な理由のほかに、消極的とはいえ現実的な理由もあります。最近ではクレジットカードを持っていない消費者の方が少ないような状況になっているので、そのような状況に対応するためには、加盟店になっていることが不可欠です。さらにほとんどの小売店が加盟店になっている状況も挙げられます。クレジットカードで買い物したい消費者は、その店が加盟店になっていなければ、加盟店になっている別の店で買い物するからです。金融機能は、店の運転資金に関わることです。クレジットカードの加盟店にならずに信用販売をすると、代金の受け取りが現金販売のように販売時点ではありませんから、実際に支払われるまでの運転資金と、それに関する事務費用を見込まなければなりません。さらに全部が支払われるとは限りません。これはアメリカやヨーロッパのように小切手が普及しているところでも同じです。現金化されない小切手もあるからです。ところがクレジットカードの加盟店になると、それらはカード会社がまとめて面倒をみてくれることになります。

加盟店はクレジットカードで販売すると、その金額に対して一定の割合の加盟店手数料をカード会社に支払わなければなりませんが、これは自社ですべてを賄った場合にかかる金融費用や、受け取った小切手の現金化されないリスクに当たるものと考えられます。販売促進のための費用ということもできます。もちろん加盟店にとっては、売上のすべてが現金で即日入金されるのが最も望ましいのですが、それ以上の効果があるために手数料を支払うことに合意して加盟店になるのです。加盟店にとってクレジットカードはこのようなメリットがありますが、その対価として手数料が店の外に出ていくことになります。そこでそれらを流出させずに逆に利益に変えようとするのがハウスカードです。とはいっても、必ずしもその店がすべてのカード業務を行うのではなく、子会社としてカード会社を設立してクレジットカードを発行することもあります。多くの顧客を抱える大規模小売店などで取り組まれています。いずれの場合でも狙いとしているところは、基本的には販売促進の機能と金融機能ですが、金融機能については加盟店手数料を支払ってその利益を受けるのではなく、カードホルダーが分割払いやリボルビングを選択したことで得られる手数料から利益を上げることを狙いとします。またキャッシングの金利収入もあります。

(3)加盟店における顧客情報の活用

ハウスカードにすると、販売促進の機能は強化されます。カード会社が発行するクレジットカードを受け入れている場合は、カード会社が契約したカードホルダーが自社で買い物するだけです。ところが自社で発行したクレジットカードは、自社の顧客が自社でクレジットカードを使うことになります。販売促進のための特典なども自社の裁量で自由に付加することができます。もちろん法律で認められた範囲でですが、最も効果的な割引などのサービスをつけることもできます。また顧客のロイヤリティ(忠誠心)も期待できます。利用者がその店の名前の入ったクレジットカードを持つことで、その店に行くという期待ができるのです。

ハウスカードを発行することで最も期待される販売促進機能は、集積される顧客情報を利用したものです。単なるクレジットカードの加盟店になっているだけでは期待できない機能です。最近ではある程度の規模を持つ小売店は、レジをコンピューター端末化させたPOSレジを使っています。このレジはコンピューター端末ですから、金銭の管理だけではなく商品のアイテムごとに販売数量を管理したり、その商品の色やサイズなども管理できます。したがってPOSレジを導入している小売店では、商品の在庫を効率化したり、売れ筋の商品をいち早く察知し、仕入れに反映させたりすることができます。ところがこれは、あくまでも店内の商品の動きを管理しているだけで、来店客の名前はもちろんのこと、住所、年齢、性別などの基本的な情報はまったくわかりません。もしこれらのことがわかり、その顧客が店でどのような買い物をしているかがわかれば、その後の販売活動はおのずと変わってくるはずです。このような情報は現金販売ではわからないものです。

カード会社によっては、加盟店に当該の加盟店で取り扱われた売上のデータを、マーケティング情報として、提供するシステムを用意しているところもありますが、自社が欲しい情報のすべてを満たすかといえば、自前ではないためすべてというわけにはいきません。そこで小売店はハウスカードを発行するわけです。顧客情報を活用した最もわかりやすいマーケティングの方法は、ダイレクトメール(DM)です。地域や性別、年齢層などによって、DMの宛先を管理することができるのはもちろんのこと、過去の買い物の傾向に従ってDMを送ることも可能です。バーゲンのスーツしか買い物したことがない顧客に、オーダーメイドのスーツのDMを送ってもそれほど効果は期待できません。一般的に対象を絞り込まないで送ったDMの反応率は一%くらいといわれていますが、顧客情報に基づいたDMを送れば効果の上がることはいうまでもありません。

(4)カード会社にとってのクレジットカード

海外旅行 クレジットカード

クレジットカードを主たる業務としている会社は、クレジットカード業務から収益を上げて会社を存続させることを目的としています。カード会社のクレジットカード業務から得られる収益源には、会員から得られる年会費、分割払いやリボルビング払いが利用された場合の手数料、加盟店で利用された額に応じて得られる加盟店手数料、キャッシングサービスの利用に伴う金利収入があります。この他アクワイヤラーの場合は、イシュアーの発行したクレジットカードが加盟店で利用されると、加盟店の使用料がイシュアーから支払われます。これらが最も効果的に機能するためには、やはりたくさんの消費者がそのクレジットカードを選択してくれることが必要条件になります。そのためにカード会社は、消費者がその気になる会員サービスといわれる多くの機能をクレジットカードに付加しています。その代表的なものがポイントサービスです。利用額に応じてポイントを積算し、それによって何か景品をプレゼントしたり、航空会社のマイレージと交換します。航空会社のマイレージも、カード会社のポイントサービスも顧客の固定化が狙いです。航空会社とカード会社が提携して、カード会社のポイントをマイレージに振り替える仕組みも多くの会社が採用しています。

今は一生に一度の海外旅行といった時代ではありませんが、経済的に余裕のない人は行きたくてもそれほど簡単ではありません。ある程度経済的な余裕のある消費者は、カード会社にとっても魅力のある顧客層ですから両者の考えが一致して提携になったわけです。これ以外には、海外旅行の保険加入などのように、個人で独自に契約すると割高なものを、カード会社が会月サービスとして提供しているものもあります。会月というまとまった組織を利用することによって、カード会社は個人で加入するより安い料率で保険会社と契約できるため、会員向けサービスとして提供できるわけです。この種のサービスは他にもありますが、このようなケースではそのサービス自体が消費者のクレジットカード保有動機、つまり選択の基準になることもあります。しかしこれらのサービスは、必ずしもカード会社の利益につながっているわけではありません。加盟店手数料は競争の結果、年々低下傾向にありますし、分割払いやリボルビング払いの手数料を稼ぎたくても、カードホルダーは一括払いでクレジットカードを使う人が圧倒的に多いからです。

(5)カード会社における金融収益

そこでカード会社の大きな収益源になっているのが、キャッシングサービスといわれる消費者金融から得られる金利収入です。ショッピングの場合はだいたい年利10から13%くらいがその料率ですが、キャッシングの場合は会社によって異なるもののその倍程度の金利となっています。カード会社のカード業務から得られる収益に占める割合も、キャッシングからの方が多いのが一般的です。カード会社は、ショッピングに対するサービスをポイントのような形で付加しながら、キャッシングの利益を期待しているというのが現実です。一般的にショッピングとキャッシングを比べると、前者の方が貸し倒れリスクが少ない傾向があります。そこで理想は、ショッピングだけで利益を上げ経営を安定させることなのですが、なかなか厳しいようです。とはいってもクレジットカードが消費者取引の道具として、ID機能や販売促進機能を駆使して顧客の固定化に貢献するものであることは確かです。そこで最近では、あらゆる業態からこの分野への参入が進んでいます。その結果、従来は銀行系、信販系、流通系、メーカー系などの区分けが簡単にできたのですが、バブル経済崩壊後の金融再編の影響もあって、もはやこのような業態区分はあまり意味のないものになってしまいました。特に金融構造の変化によって、優良な貸出先の少なくなった銀行のこの分野への進出が著しいものとなっています。簡単にいえば従来の大口の企業金融(ホールセール)から、小口の消費者金融(リテールファイナンス)への転換です。つまり高利回りの金融収益を狙った進出ということができます。またネットビジネスからのこの分野への進出も進んでいます。インターネットにクレジットカードは欠かせないものですから、それを自前で調達するということと、やはり金融収益の獲得を狙ったものということができます。

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